TAKST の雑念所

週2は何かを書くということを目的に、思いついたことを何か書きます。

GAFA 評シリーズ1 - Google (Alphabet) は consumer ビジネスをどう扱うかが分水嶺

外資系IT大手で働いている身で近場で見聞きしている情報からの感触と、日本語であふれている情報とで結構な乖離がある気がするので、思い付きで GAFA の個人評的なことをやってみようかと思う。表記の順番通り、まずは G = Google = Alphabet から。いつも通りまずは3行にまとめてみよう。

  • Google のビジネスは Web 広告依存で健全ではない
  • Google が今後のビジネスをどうしたいかクリアに見えない
  • ごく一部の技術を除いて Google に光るものはない。そしてそのごく一部の大半は OSS 化していたりする

Google(Alphabet) の直近の決算報告はこちら。

GOOG Exhibit 99.1 Q4 2021 (abc.xyz)

大半が Google advterising でよく CM で見る Chrome Book も Pixel もビジネスには寄与していないし、Google Cloud Platform (aka. GCP) も結果は芳しくない。今も変わらず Google は検索広告の会社である。更に言えば、最近の Google 検索は広告と SEO 対策されたもので埋め尽くされており、深い情報や正確な情報は検索演算子 ("" や -、site: 等々) を使わないと調べられないし、リアルタイム性が高い情報は TwitterInstagramTikTok を調べた方が早いという有様になっている。そういえば、最近は以下の記事も話題になってましたね。

Googleの「うちの検索結果はお金では買えない」という古い記事が発掘されて話題に - GIGAZINE

つまりは、Google 検索は顧客誘導をかけたい Google advertising のユーザーのためのプラットフォームになってしまっていて情報を検索して得るという Google 検索そのもののユーザーに最適化されたものにはなってない、ということです。これは非常にまずく、Google 検索自体の価値が下がればユーザーが離れ、広告媒体としての価値が下がるわけで、危惧すべき状態に陥っています。まぁ、Google 検索から単純に取って代われるものがあるかというとそうでもないので、余命はまだ短くはなさそうではありますが。そして、Google 自身もそのことには気が付いているので、広告で稼いだお金をジャブジャブとつぎ込んで他のビジネスを立ち上げることに躍起になってます。それが辟易するほど見せられる Windows PC ディスりの Chrome Book の CM であり、何が言いたいかよくわからない Pixel の CM であるわけですね。GCP の方は commercial business なのでわかりやすい ad は打ってないですが、AWSMicrosoftOracle 等からグローバルで社員を札束を積んで引き抜きまくったり、利用額1年分のクレジットみたいな無茶なオファーでユーザーを捕まえようとしたりしているという情報が聞こえてきます。

とは言っても、予算が決まっていて選択肢がない GIGA スクール案件(小・中学校での PC・タブレット導入) で追い風が吹いた以外では Chrome Book は全然伸びてないです。

9月デスクトップOSシェア、Chrome OSが増加 | TECH+ (mynavi.jp)

いや、というかあの CM、6秒で起動する PC って M2 SSD 載ってれば OS 問わずにそんなもんじゃないですかね? セキュリティ機能も Windows 標準で Windows Defendar 載ってますし、何をターゲットにしているのやら?

Pixelも残念な状態です。アメリカ市場・日本市場でやっと2%強。グローバルでは圏外レベル。あれだけ広告費用打ってこの状態って大丈夫かしら。

Mobile Vendor Market Share Japan | Statcounter Global Stats

他社でもありがちなのですが、特定サービスに特化したビジネスをしている single issue company と違い、複数サービスを柱にビジネスをしている multi issue company って上手く組織や人事評価を作らないと上手く動かなくなるんですよね。Google の場合、広告ビジネス(Google 検索/Ad と YouTube Ad) のユーザーや市場は企業の広告を打つ人たちですし、Chrome Book は安価PC、Pixel は Middle and/or High end スマホGCP は開発者 and/or 企業のシステム部門、とそれぞれのビジネスの想定ユーザーもターゲット市場もバラバラで、売りが立つまでのプロセスもリードタイムもバラバラです。広告ビジネスが強すぎるので、同レベルの成果を求められると Chrome Book ビジネスには無理ゲーですし、consumption business の GCP と売り切りの Pixel もビジネスとして完全に別物でしょう。それぞれのビジネスに親和性がないことも問題です。強いて言うと、Google 検索・YouTube のプラットフォームとして GCP (= 自社データセンター) が使えるところくらい? このちぐはぐ感を何とかしないと Google の今後の見通しは明るくならないと思ってます。

とは言いつつも、Google 発祥の優れた技術は色々とあります。具体的には直近では Kubernetes であったり、Big Query だったりします。しかし、k8s も CNCF に渡してしまいましたし、Big Query もマネタイズできているか、というと期待しているほどではない。Google の Engineering team には企業当初の崇高なミッションと、技術に対する真摯な姿勢が残っていますが、作り上げて外に放出し貢献するという状態になっていて、GCP 他の自社ビジネスに上手くいかせているかというとそうでもない。GCP Anthos も内容やビジョンは素晴らしいと思うんですけど、人やリソースの張り方を見てもそこまでやる気があるように見えないですよね...。IBM ( RedHat) に分散クラウドなる言葉でビジョン横取りされてる感がありますし。ここら辺のちぐはぐは究極には経営トップの方向性の問題なような気もしなくはないです。