TAKST の雑念所

週2は何かを書くということを目的に、思いついたことを何か書きます。

"文系管理職のための失敗しない DX" という言葉に覚える複数の違和感

どうもこんにちは。人様の企画にケチをつけるつもりはないのですが、以下の記事連載に複数の違和感を覚えまして、これが国内市場を端的に表してるなーと思ったので書き散らかします。先に断っておきますが、各記事の中身まで全部読み切ってるわけではないとうことと、企画と記事の内容そのものを dis りたいわけではないです。悪しからず。

文系管理職のための失敗しないDXの記事一覧 | 東洋経済オンライン | 社会をよくする経済ニュース (toyokeizai.net)

 

  • 違和感1: 文系がフォーカスされる
  • 違和感2: DX の話なのに管理職を対象にしている
  • 違和感3: "失敗しない" という修飾語

 

高いニーズがあって PV 数が稼げるだろうなーというのも想像に難くないです。それが故に根が深いとも言えるんですが。こういう体裁の連載に人が集まるというところに根本的な問題があるんだろうなぁ、と思う次第。では、一つずつ掘り下げます。

 

違和感1: 文系がフォーカスされる

文系理系の括りや無駄な文系 dis、理系上げに意味がないと個人的に思います。文系が作者の気持ちを考えるだけじゃないですし、一口に理系と言っても数学者と工学における品質管理を突き詰める人の専門性はまるで異なります。IT というかコンピュータサイエンスも細分化が進んでまして、データサイエンティストの中でも統計系に強い人や機械学習に強い人で分かれていくレベルです。そういう現実を横に置いて、丸っと文系という扱いにするのが不思議極まりない。逆に外資ITに長年身を置いていても文系出身で Tech Role のトップを突き進む人もいますし、文系理系区分ってやっぱり意味がないと思うんですよね。現状の日本だと、大学受験前後のプロファイルに強いアイデンティティを持つ人がまだまだ多いんだろうなぁ、という感想。

 

違和感2: DX の話なのに管理職を対象にしている

DX は本来は (今話題の) シリコンバレー的なビジネスモデルを従来型企業も取り入れて、アジャイルに近い製品開発やビジネスをしよう、という話だと理解してます。日本の場合、経産省による定義で誘導されてまして、こちらはどちらかというと、ユーザー企業の IT 投資の遅れと、ベンダー・SIer 側に IT 人材が偏っていることやそもそもの数が足りないことを問題視している要素が強かったりします。ただ、どちらにせよ管理職の階層の問題ではなく、経営者層の意思決定の問題です。管理職も IT への理解が必要とされはしますが、ビジネスモデルの改革の話なので、それに根本的に間違うとすると部課長レベルはもちろん、本部長クラスの管理職の職責の話ではないと思います。トップが弱い・トップダウンしようとしても現場に負けがちな日本企業ならではの話だなぁ、と。

 

違和感3: "失敗しない" という修飾語

デジタルトランスフォーメーションは失敗します。というか、失敗してなんぼです。環境変化が激しいので、迅速に新しいテクノロジーを採用できる体制・組織にすることが根っこにありまして、そのためのデジタル化です。なので、新しい試み・新しい技術を最低限でさっさと試して、ダメなら捨てる、成長しそうであれば更に投資する、というのを高速にサイクルを回していく必要があるよね、という話です。Facebook こと Meta のメタバースへの舵取りがどうなるかは失敗を基にした例にするのは微妙な結果になりそうですが、成功例に近いのは、"Mobile first, cloud first" を標榜しつつ、モバイル側は OS から下のレイヤーを捨てて、アプリから上に絞ったマイクロソフトが例になるかもしれません。

 

DX は失敗を恐れたらどうにもならない。逆にうまい失敗の仕方を学んで失敗の数を重ねる必要があります。極端に失敗を恐れ、一度の失敗でキャリアを失う可能性すらある日本のサラリーマン稼業の闇の一端を示しているように思います。

 

 

まぁ、極論は DX は設備投資の額と方向性の話なんですけどね。この記事のニーズが高いことはよーく理解はできるものの、ニーズが高いこと自体が DX が進まない根本理由の一つだろうなぁ、と思った次第。今日書き散らしたかったのはこれくらいです。

"ChatGPT 対応" という面白用語

流行りに若干乗り遅れましたが、ChatGPT がバズってます。猫も杓子も ChatGPT。直近ではナーフされてしまいましたが、新しい Bing chat にはかなりの可能性を感じました。 fine tuning 必須でしょうけど、"解決しがいのある問題"、あるいは "問題を解決さえすればすさまじい価値を生む" ことを納得させた、という意味では非常に大きなマイルストーンになるでしょう。初代 iPhone が 3G 対応もしていなければ、アプリの対応もしていなくて、素晴らしい可能性はあるものの粗削りだった、という話と同じです。

 

で、本題の方、"ChatGPT 対応" という言葉が面白くてしょうがないので、書いておこうと思います。国内外問わず、最先端のバズに乗っかるべく、様々なサービスが ChatGPT 対応しました!というアナウンスをしています。しかし、これ、おかしいんですよ。何をどう対応したんですかね? ChatGPTは現状、OpenAI 社が GPT3.5 モデルをベースにして提供している SaaS であって、API の公開もしていなければ、連携する機能なんてないはずなんです。対応するとなると、Web request 投げてテキストのリターンを基に処理するようなパターン?ちょっと無理が有りますよね。多分、厳密には公開済の GPT-3 text-davinci-003 を使ったりしてるんでしょうけど、流行りに乗っかるためとはいえ、あまりに適当過ぎやしませんかね。"ChatGPT 対応しました!" という発言がマーケ先行で中身分かってないです!宣言と等価になっているので、生暖かく市場動向を見守ろうと思います。

 

ちなみに、Generative AI 自体の話。一部では結局使えないだとか、真の知性ではないとか、新しいテクノロジーを否定するときにありがちな、細部を拾ってダメ出しをする層も確認されていますが、これまた本質を見落としてます。去年から流行っている Stable Diffusion にしても、今回の OpenAI にしても、"どんなことでも" x "それっぽく" 処理できる、というのが重要で、すごいことだと個人的には思います。超最新の情報や、超専門的な内容に対応できないのは仕方がないでしょう。だって、そんな学習データないんだし。世の中の人間も、そんなものをカバーできるのは現場か最先端のごく一握りの当事者だけです。なんにでも 80点の回答ができる、というのが凄いことでもあり、そういうもんだということを理解する必要がある、ということでもあります。なんにでもそれっぽいことを即時返してくれる。それをそのまま鵜呑みにするのか、その先、80点の情報からあたりをつけて 95点や100点まで突き詰めるところまで人間が自身で作業をするのか、は目的と使う人次第でしょう。このテクノロジーはもう世の中に解き放たれてしまいました。使われて振り回される側にもならず、斜に構えて馬鹿にする立場にもならず、ちゃんと正しく使える人間になりたいもんですね。

なんにでも歴史があって、問題の要因は複雑極まりない、という話

全国規模で組織的な強盗事件が巷を騒がせております。どう考えても頭は堅気じゃないだろうなーという感がありまして、色々と有識者による解説記事や情報も出てきていますが、いやはや、これは難しい。難しいというか、積み重なった経緯と様々な事象・要因が複雑に関係していて、単純ではないし、根本解決は相当大変そうだなぁ、という感想を持った次第です。

 

統一教会問題にも関係するような反共対応のために反社会勢力を利用せざるを得なかった過去から、時代が下って徐々に締め付けを強め、存在を許さないようになっていったという歴史があり、その結果が今の半グレ勢力という話があります。それにも関係して、反社勢がシノギを確保することが難しくなった結果として、後ろめたい金銭を強盗することで利益を確保するという稼ぎ方が確立され、強盗という犯罪行為が組織化されていた、という状況があるようです。どうもオレオレ詐欺に使われてきたリストや金銭有無の確認プロセスが流用されている感もあります。

 

並行して、日本社会における中産階級の埋没で、若年層が稼げなくなったという状況があり、そういった社会的弱者を反社勢力が都合良い駒として使う状況になってしまっている。こちらの根本は社会全体の経済状況になります。ちなみに、日本の失われたウン十年という扱いで、日本がダメという扱いをされますが、物価インフレの関係で絶対値で見ると日本の凹みが目立つものの、アメリカでも中産階級の没落は問題視されているので、日本だけの問題ではない可能性が高いと思ってます。根本の根本は資本主義のシステムエラー、ないしは、米中経済同盟において中国にオフロードし過ぎたことの悪影響ということも考えられ、単に日本がヤバいというだけの話ではないんじゃないでしょうか。まぁ、少子化は大きく影響はしているでしょうけど。これはこれで超複雑。

 

更に他の問題点もあります。使い捨ての駒にされている末端の人々が捕まるわけですが、服役後に真っ当な職に就ける可能性が極めて低い環境になってしまっているせいで、稼ぐため、生きるためには再度、使い捨ての駒役に戻るしかない、という構造上の問題です。社会全体の潔癖さ、寛容性の低下、というのは成熟した証拠とも言えますが、意図していないにも関わらず二極化を産んでしまう、という、これまた大変難しい。

 

その他でいえば、闇バイトなるものがシステム化されていることも問題でしょう。情報社会化したが故に、悪事を目的にした組織化も容易になってしまっているということが言えると思います。テレグラムが、とかニュースで言われてますが、テレグラムが無くても何か使えるものを使って組織化するでしょうから、ここはどうにもならない。

 

ということで、ネット上で確認できる情報を流し読みするだけでも、これだけ多数の要因が浮かんできて、しかも一つ一つがかなり根深い。少子化を解決して、経済を上向きにして、反社問題をなんとかし、社会全体が再犯を防ぐために前科者に易しくなって、みたいに全部を解決しないと根本解決にならないわけですが、こんなこと、なろう系のチート野郎主人公でも難しいでしょう。一番、近道に見えるのは経済をなんとかするところな気もしますが、それができれば苦労しません。歴史が下るにつれて、関係する要因が増え、なんでも極めて複雑になってるなぁ、ということを再確認した、という話でした。

2023年の展望

あけおめことよろ。

 

2022年頭に定期的に適当に書き散らす目的でブログやります、と宣言して以降、本業が忙しくなるにつれておろそかになり、後半はろくに書いてませんでした。途中でちょっと欲をかいて、受けそうなネタを探したり書こうとしたりしたのが良くない。小難しく考えると逆に書けなくなるという典型ですな。ということで初心に帰り、何を狙うでもなく、文章を定期的に書く、という本来の目的に戻って、書き散らしたいと思います。

 

年が明け、仕事も再開し、日常が戻ってきている状態かと思いますが、既に1月も下旬が見えてきました。2023年の 1/12 が終わってしまう。時が経つの早くない?もう 2023年の展望とか言うには遅くない?でも書きます。今年の展望と言っても、ロシアのウクライナ侵攻や岸田政権の行く末みたいな展望は専門外なので無理です。自分の領域に絞って、IT/Tech 業界とテニスについて思いつくままに垂れ流します。

 

まず IT/Tech 業界の話。年明け早々に AmazonMicrosoft で大規模解雇の話が各メディアを騒がしています。ビッグネームなのでニュース受けも良いのでしょう。しかし、その実、本業が苦しい Intel や、買収・統合でバタついてる Citrix 等々、既に大規模解雇済ないしは実施中のテック企業も多数ありまして、AmazonMicrosoft あたりはビジネス上の問題があっての解雇というよりは、今後の景気後退を見越した未然防止的な側面と、これまでバブル的に増やし過ぎた人員を整理する機会として現状の外部状況を使っているという側面の2点が強いんじゃないかなーとは思います。AmazonAWS 以外のビジネスは結構厳しそうなんで、切羽詰まった解雇も含まれてるかも、ですし、MicrosoftActivision Blizard のような大規模以外の中小規模な買収を継続的に行っているので、それらの統合であふれている部分の整理という意味もあるかも、という気はしますが。とは言え、破壊的な影響はこれらの Big player では生じないと思います。深刻な影響が出るのは投資マネーの流動性が下がることによるシリコンバレーないしはシリコンバレー的な若い企業群、そして、インターネットバブル崩壊リーマンショックという大きな津波を受けた経験がない、Big name 扱いされている中でもやや若い企業となる Meta や Tesla、 Netflix あたりかと思います。

この業界は動きがドラスティック過ぎる上に、内情を聞いてみると、スーパーエンジニアどころかスーパーエンジニアゴッドスーパーエンジニア(SSESS) みたいな人が辞めたり、転職したりすることでパワーバランスが変わった、みたいな人依存の部分があったりするので、12か月後の予測は正直難しいですが、マクロな方向性としては老舗がしぶとく生きて、若い企業がヤバいことになる、というのは間違いないだろうと思います。あとは締め出しを内外から食らってる中国系もいよいよヤバそう。今年は新しいスターが出る年、というよりは、既存プレーヤーの淘汰がされる年、ということで。

 

技術の方向性としては IT 領域がだいぶサチって来ているので、OT 領域への侵食が進みそうな気配がありますが、これもまたエンドユーザー企業側の投資も必要な話なので、どうなることやら余談を許しません。特に日本の場合は設備投資をろくにしない企業ばかりなので、DX という言葉はバズワードマーケティング用語として浪費だけされて実態は何も進まない可能性が高いです。デジタルトランスフォーメーションって、業態変更を伴うIT 要素を足した設備投資の話のはずなんですけど、分かってる経営者がどれくらいいるのやら?利用中のオンプレ サーバーを AWS EC2 に持って行ってもコストカットにもなりゃしないし、そのロジックを無理に PaaS に shift したところで何も産まれないのよ??

その観点だとヨーロッパの方は IT/OT 垂直統合での開発・実装文化が強そうなので、先んじて進みそうな状況。アメリカは極一部の企業だけが突き進むでしょう。次に伸びそうな市場はインドと東南アジアですが、アメリカと結託した中国みたいな全面的な統制姿勢は取らなそうなので、緩やかな伸びになりそうな予感。個別技術としては個人的には小さな k8s とその管理がどう流行るか、が気になります。

 

他方のテニス、というか ATP。これまた混沌としてます。アルカラスは若いのに怪我でAO2023 欠場してるし、ディフェンディングチャンピョンのナダルも故障の影響もあって早期敗退しているし。Big4 時代が異常、特にフェデラーが超異常だったことが良く分かる。個人的には覚醒したよっしーこと西岡選手がどこまでいけるかをしっかり注目しておきたいのと、シャポバロフ・ムゼッティというムラのある天才肌選手たちが今年こそ覚醒しないかを追いたいと思います。まぁ、この手の選手はフェデラー以外、後にも先にも覚醒した試しがないんですが。ガスケとかアラジとか。フェデラーという超大成功例が凄すぎるだけかな。

 

ではでは、超書きなぐりですが今回はこれくらいで。

モグキャンの思い出

ただいま。もとい。まじめなことを書こうとするから続かない。適当に思いついたことを書くことにしよう。とはいえ、意味がないことを書いても完全にチラ裏なのが難しい。とりあえず、今、書こうと思っていることを3行で。

  • 昔、モグキャンというお菓子がありました。好きでした。
  • 今は売っていないというだけではなく、ググっても全く情報が出てこないレベルで存在しなかったことになっています。
  • インターネット前後、SNS 普及前後で情報の残留具合って全く違うんだなーという感想。

さて、行きます。ググっても全く情報が出てこないので、気軽に調べる限りではどうにもならないレベルなのですが、昔、モグキャンなるチューニングキャンディーのお菓子がありました。身も蓋もない表現をすると、ハイチュウの模倣品。ただ、少し安かったのと、1粒のサイズが大きかったこと、味がソーダとブドウというよりジャンキーに寄った感じだったのが特徴だった記憶があります。個人的にはこのモグキャンが大好きでして、よく食べてました。食べれるなら今でも食べたいです。実際にはどこがソーダなのかさっぱり分からない、駄菓子特有のソーダ味でして、しかも粒がデカいので、口の中いっぱいに甘酸っぱさが広がる感じが良いんですよね。他のお菓子に比べても安いし。いや、今、仮に再販したとしたらいくらになるかは分からんですが。

で、このモグキャンなんですが、いつからスーパーや駄菓子屋で見かけなくなったのか、さっぱりわかりません。気づいたら見かけなくなり、買うこともなくなってしまいました。ふと存在を思い出して、ググってみたわけですが、恐ろしいほどに情報が出てこない。かろうじて見つけられたのは以下の情報くらい。

子供用大型ソフトキャンデー「モグキャン(ソーダ)」発売(カネボウフーズ) - 日本食糧新聞電子版 (nissyoku.co.jp)

大粒で60円と安い。記憶は正しかった。合っててよかった。でも、画像も出てこないし、発売開始の報道だけで、終売の情報も出てこない。重ねて言うと、2001年に販売開始というのはいまいち記憶と整合しない。これは、地方では販売していたのものの販路を全国に広げた際の報道なんだろうか?クラシエさんに問い合わせたら教えてくれるのだろうか。もうあの安っぽいおいしさを味合うことは不可能なのだろうか...。

 

まぁ、この個人的な特定駄菓子への哀愁はさておき、ググって出てこない代物の埋没具合を再確認した、というか、下手するとこの世に存在しなかったに近しい扱いになるのも恐ろしいなぁ、と思った次第です。自分の記憶をどこまで信じてよいのやら、ですが、恐らく全国販売する前段階は1990年代後半で、まさにインターネット黎明期。首都圏で販売していたわけでもない可能性が高そうなので、余計にこの時代のインターネット上に情報が出ることもなかったでしょう。SNS も普及した今となっては、そのような形でデジタル世界上で "まったくもって無かったこと" になるものも少ないとは思いますが、2000年代以前の代物で、振り返られることもなく、デジタルのプレゼンスが作られることもなく、消えていったものはモグキャン以外にも沢山あるんだろうなぁ、と。

 

ということで、何の意味もない久しぶりの投稿を以上で終えます。モグキャン食べたい。クラシエさん、大人のモグキャンもお願いします。

専制的な体制には多くの問題があるが民主的な体制も問題がないわけではないんじゃないか問題

  • 現状のロシアを引き合いに出すまでもなく、過ぎた専制体制は独裁になり、望ましくない結果をもたらした事例は枚挙にいとまがない。
  • 他方で過ぎた民主体制も過平等・悪平等を産んだりリスクを取ることを避ける結果になり停滞をもたらす事例もこれまた多数ある
  • 結局バランスだよねという元も子もない結論になるが、これは極めて難しい問題なんじゃなかろうか

ということで久しぶりに思い付きネタで雑に書いていこうと思う。言いたいことは箇条書きで言い切ったのでその補足をダラダラと書いていく。

現状のプーチンだかプトラーだかよく分からない戦時情報統制状態で叩かれているロシアを例にするまでもなく、専制体制を維持し続けようとすると独裁体制に至り、悲劇的な結果をもたらした例は大小たくさん思い浮かびますよね、と。ただ、これまた難しいのがすべてのことが終わった後で事後に評価するとネガティブな評価になるわけですが、各事例の独裁体制トップの方々も、それが実務力なのか政治力なのかはさておき、なんらかの能力が秀でていて、結果を残し、周囲の人間に評価されないとトップに立った上で専制体制を作るには至らないはずで、何か良い結果をもたらしていた時期はあったはずなんですよね。(世襲制でダメな世代に引き継がせてしまった場合は前世代までの良かった状態を評価する、ということで。) 別に過去・現在のやらかした、ないしはやらかしている独裁者を擁護するつもりは毛頭ないんですが、専制体制は否定されるべきもの、と単純評価してしまうのは思考が浅いんじゃないかなぁ、という問題提起です。

単純理論でいくと専制体制は打破すべきもので民主体制こそ至高、共産体制もダメだったしね、という話になるんですが、民主体制もダメなところあるよねぇ、ということが言いたい。今の日本社会って色々と問題はありますが、理想的な理屈に則った社会だと思うのです。完璧とは言いませんし、むしろ理想的な理屈で押し通そうとした結果、色々な理屈がぶつかって問題が噴出して袋小路に入っている、というのがより具体的な説明でしょうか。具体的に言うと、「老人や病人は手厚くケアすべき」、「既得権益は許さず社会に還元すべき」、「政治家や経営者は世襲ではなく民主的に選出すべき」、「高所得者から徴税して低所得者に還元すべき」、「企業淘汰は望ましくないので救済措置を設けるべき」等々。どれも理想論としては正しいです。それらが理想に沿って実施されているが故に、日本社会の安定性は高く、治安も良い。ただし、その分、閉塞感も強い状況なってしまっているなぁ、と。

社会全体ではなく企業活動に視点を移しても同じことが言えるんじゃないかなーという気がしておりまして、別に財閥主体で世襲制統治が正しいと思っているわけでもないのですが、各企業で社内の生え抜きを役員や社長に格上げしていく体制は、一見、自社のビジネスや歴史、人間関係を把握しているという正しく理想的なやり口に見えて、任期が3-5年、長くても7年ほどで、新しい挑戦や開拓も許容されないし、そもそも正しいチャレンジや失敗の仕方を知らないサラリーマン社長を増産してるんじゃなかな、と。帝王学なんて言葉は最早死語になっているように思いますが、やはり経営は経営というスキル、社長は社長というスキルが必要で、社内の特例領域でどれだけ傑出した業績を出そうとも、企業のトップとして胆力と実行力を持った仕事ができるかどうかは別だと思うのですよね。その証拠というわけでもないですが、自動車業界の中でのトヨタソフトバンクグループ、楽天グループ、ファーストリテイリング日本電産あたり、創業者社長か創業者一族で経営者としての教育を受けた人がトップの企業が元気なように思ってしまうのです。

もう一つ、蛇足的に付け加えるならば、最近はようやく日本企業らしい日本企業も外資系企業でのトップ経験のある人間や、スタートアップ系からの中途採用も進まりつつあると思いますが、これもちょっと一筋縄ではいかないと思ってます。というのも自分自身が外資系にいるからわかるのですが、外資系日本法人って規模が小さいんですよ。本社側の上まで上がったような、例えば Microsoft の沼本さんみたいな人は別ですが、各社の日本法人のカントリーマネージャーだとかって、率いる人の数は多くて千の桁なので、数万-数十万の人を率いるという経験はないのです。 IT 領域なんかであれば技術的な知見や先進的な領域での経験はあるかもしれませんが。ということで、外資企業の人材を日本企業に入れたとしても、そこから非常に大きな組織を動かして成果を出すというスキルを習得する必要があるので、全員が簡単に結果を出せるとは限らないわけです。悪くはない方向性ですが、短期的・短絡的に結果がでるもんでもないな。と。

ということで結論は、専制体制・独裁状態も望ましくないけど、民主体制も必ずしも最高じゃないよね、ということ。うまいことそのバランスを取ることが大事なんだけど、それがまた一番難しいところだよなぁ、という毒にも薬にもならない結論で終えようと思います。幹部教育という言葉が正しいかどうか分からんですが、経営者あるいはビジネス責任者としての経験とスキルを積むというキャリアパスを作って、そこで胆力と実行力を持った人を増やしていける状態にならないと、今の低迷する日本企業のサラリーマン社長ワールドは袋小路から抜け出すことはないんじゃないかな。

GAFA 評シリーズ4 - Apple の強みはコアOSが一つであることしかない

好評か不評かもよく分からん勝手な GAFA 評シリーズです。ついに4つ目の Apple へ。まずはいつもの3行。

はい。ではいきませう。もう誰も疑問を呈さないと思いますが、Appleプラットフォーマーとしての地位は確立していますが、革新をもたらす企業ではなくなってます。M1? CPU なんて果てしない性能拡張競争でしかないので、コアアーキテクチャから実装してるわけでもないですし、特筆に値するものではないです。プロセッサー関連の技術者の流出も多数報道されてますし、性能優位もそんなに長続きしないんじゃないですかね。

強いて言うなら、ARM アーキテクチャに変更しても OS とその上のアプリケーションの稼働もちゃんと担保できているところはすごいかなーとは。Windows on ARM がいつまでたっても立ち上がらない Microsoft とは大違い。とはいえ、これは iPhone / iPad の ARM ベースのデバイスプラットフォームがあることが大きいだろうなぁ、と。MS は Windows Mobile 撤退以降、ARM にそこまでコミットしているように見えないですし。Apple のビジネスは iPhone/Mac/iPad なわけですが、これらはすべて NeXTSTEP から発展したシングルソースコード起因の製品で、かつ、ハードウェア生産もファブレスで実現しているので、極めて効率的にビジネスを実現するなぁ、とは思います。ただ、あくまでビジネスの拡大がそこまでで留まっているので、iPod - iTunes Store を生み出したような創造性は失われてるな、と。AirPods しかり、直近の新製品で売れてるものって、結局、iPhone/iPad/Mac の周辺の何かでしかなく、広がりが見えないものばかり。

iCloud も何がしたいか分からない状態のまま、もはや存在すら怪しい感があります。iPhone の成功で社内のパワーバランスがおかしくなってるんじゃないかなーと妄想したりもしますが、新しいソースコードをベースにした製品・サービスが出てこなくなって久しい、これはティム・クック体制になる以前から数えて長い期間になっているので、状況は深刻なんだろうな、と。横を見てみれば、Google は Search / Android / Chrome でそれぞれ違うコードをベースにした製品群を持ってます。効率性という意味では Apple は非常に効率的なんですが、あまりに他を持たなすぎるのがリスク、というよりは出てこない状況の問題の根が深いので、そこが今後の根本的なリスクになるんだろうな、と。Apple の OS 以外の輝いていたプロダクトって 2002年リリースの WebKit まで遡っちゃうんじゃないですかね。20年経過。Apple の明日はただの携帯屋さんで終わってしまうのか...?